知財担当がマーケティングも意識すべき理由

Twitterで知財活動と市場調査の関係について話をされている方がいたので自分の考えをまとめてみました。

市場に対する意識がないと「1と2」、「3と5」、「4と6」の差が分からず特許費用などが無駄になるおそれがあるところがポイントです。

領域1と領域2の差

開発した製品が売れないリスクがあるか否かに差があります。
具体的には、技術的に自社で実施できるし特許性もある領域(領域1,2)で、特許出願し研究開発して製造体制を構築した後に売れず投下コストが無駄になるか否かの差が生じます。
また別の問題として特許性がないときには、その発明の特許性を阻害しているのが他社の特許である場合には特許の侵害リスクもあり注意が必要です。
もちろん、領域1であっても他社特許の侵害リスクがゼロになるわけではありません。

領域3と領域5の差

技術的に自社実施できるが特許性はないという場合には、市場があるならば何とか特許化できないか再検討したり、ノウハウ化(ブラックボックス化)したり、他の参入障壁を作ったりしていくことを考えることで新たなビジネスの可能性を掴むことができます。

領域4と領域6の差

大手企業が他社に特許をライセンスして実施させるような場合や、極めて魅力的な市場で自社の何らかの強みを活かしつつアライアンスやM&Aで生産能力や販売能力を補完することが出来そうな場合にはこの領域について検討を深めるのもよいでしょう。
ただし、自社に関わらない部分に工数をかけるのは自社の強みを活かせない可能性が高く、結果的に効率的とはいえないのでどちらにしてもあまり重要ではないように思います。
通常の場合はこの領域の検討をするぐらいだったら上記の領域の検討に時間をかけた方が良いかもしれません。

この図にない重要な観点

その発明(ビジネス)の実施をした際の他社特許権の侵害可能性や、自社特許発明を他社が特定しているの特定し易さである侵害特定可能性なども重要になります。
市場性があれば当然に他社もそれを察知している可能性が高いわけで、他社が権利を持っていることも考えられることから、特許性調査だけでなく実施可能かの調査も必要になります。

市場調査の方法

知財部門のメンバーは技術部門のメンバー(発明者)と面談をして発明の掘り起こしなどを行うわけですが、その中で売上の予定などを聞くこともあると思いますしそれも当然必要です。しかし、発明者から発明品の売り上げの予定を聞いた場合であっても、その発明の発明者視点でのバイアスがかかり実施量を多く見積もる傾向があるので客観的な数字もやはり必要です。

このために、営業や企画にあるマーケ部門と協働できればそれもよいですが、知財で市場調査も出来るならやった方がよいと思います。
調査用のツールはリンクに集めているので役に立ちそうなものは使ってもらえばよいですし、なんならコンサル会社に外注しちゃうのもありです。

その他

今回の資料は要素が多い割にきれいにまとまった気がします。
左に△〇□(ストゥーパ)法で各要素の重なりを示しながら発想を促しつつ、右に組み合わされた各領域の解説を表で示す形にしました。
3要素で和集合をとるような事象の検討にはよい表現かもしれません。
それから、上記の解説は知財部門の視点で基本的に記載していますが、技術部門やマーケ部門といった他の当事者の目線でまとめると新しい示唆が出てきてよいかもしれません。

以上です。