バブルチャートを使った動向の検討-GAFAMとサムスン電子を題材に

佐藤総合特許事務所の弁理士 佐藤です。

先の投稿「グローバル時価総額トップ100社の時価総額とパテントファミリー数の相関の検討」ではエクセルを用いた散布図やバブルチャートでの分析例を解説しました。
その投稿で解説したバブルチャートの応用例として「同じ系列で1つの会社の動向をバブルの移動として見ても面白いように思いました。」とコメントしていたのですが、実際にいくつか試してみたので紹介したいと思います。

サムスン電子の「時価総額×売上高×パテントファミリー数 」

まずは試作として前回の検討でパテントファミリー数が最も多かったサムスン電子のデータを用いて動向を確認してみました。

データについては、前回と同じくcompaniesmarketcap.comと、PatBaseから取得しました。データの取得日は2021/10/8です(以下の検討でも同じです)。
PatBaseでの検索式は”PA=(samsung and electronics)”とし、373,741件を対象として各年のパテントファミリー数を取得しました。

companiesmarketcap.com のサムスン電子のページ↓

Samsung (005930.KS) - Market capitalization (companiesmarketcap.com)

そこから作成したチャートは下記のツイートを参照してください。

  • 横軸に時価総額(十億ドル単位)、縦軸に売上高(十億ドル単位)、バブルサイズにパテントファミリー数を取りました。なお本投稿において2021年の売上(と後述の利益)は予測値です。
  • グラフの時価総額と売上高の数字は10で割るとざっくり「兆円」単位になります。
  • バブル内には、年とパテントファミリー数を併記しました。
  • 全体的な動向としては売上高と時価総額は右肩上がりで増加しているものの、売上高は2018年以降に停滞しているようにみえます。
  • 2021年はまだ3ヶ月弱あるため、2021年のパテントファミリー数は2万6千件程度となり2008年以降では最大になりそうです。

以上の通り、このような形式で検討することで、企業の動向をある程度把握できそうでしたので本格的に検討に使ってみることにしました。

GAFAMの「時価総額×売上高×パテントファミリー数」

そこで、先の投稿における時価総額で上位であり、しかもパテントファミリー数も多かったGAFAMの5社について標題の指標を対象にしたバブルチャートを作成し並べることで比較できるようにしました。
(以下の図ではPCなどではクリックすると拡大表示されて見やすくなります)

  • 指標の軸などは先のチャートと同じですが、縦軸と横軸はすべてのチャートで同じ縮尺としています。
  • バブル内は年の数字のみを表示するようにしました。
  • バブルサイズは、各社のパテントファミリー数の最大値を基準に適宜倍率をかけてパテントファミリー数を企業同士で比較できるようにしています。後ほど具体的に説明します。
  • これを受けて、売上だけ見ればamazonはダントツだったのでamazonに特に注目してしまい、以下の感想を持ちました。

参考まで、使用データを以下に示します。

  • この表における下段のMaxが各社のパテントファミリー数の最大値であり、これら5社の最大値のなかの最大値であるMicrosoftの"8663"を基準として、それより少ない4社は比率を調整値"Size adj"として設定しました。
  • これを上述の各バブルチャートにおいてエクセルの「バブルサイズの調整」に用いることでチャート同士の比較をできるようにしました。
  • 本例ではGoogleは”Size adj"が"0.79”でしたので、下のエクセルの画面のように「バブルサイズの調整」に"79"を入れることでMicrosoftのグラフに対して小さくするように設定しています。

バブルサイズの調整機能は、バブルが大きすぎるときに小さくするとか、逆に小さすぎるときに大きくするために使うことはあっても、他のチャートとの比較に用いる例は少ないのではないかと思い、TIPSの一つとして説明しました。

GAFAMの「売上高×利益×時価総額」

しかし、会社というのは赤字で販売をすれば売上高はいくらでもあげられることを考えれば売上が大きいことだけが会社の価値ではないという企業評価の基本的な考え方に基づき、いったん特許のことは横におき、利益を入れて検討してみることにしました。

そこで、上記の companiesmarketcap.com から利益のデータも取得し、売上高と利益と時価総額のグラフに書き換えました。

  • 指標としては、横軸を売上高、縦軸を利益(EBIT)、バブルサイズを時価総額としました。
  • また、軸が売上高と利益になったので利益率5%~50%のラインも入れました。利益率の動向も併せて確認できるので分析しやすくなったのではないかと思います。
  • 利益率で見ると、MicrosoftFacebookが40%付近、AppleGoogleが30%付近、amazonが8%程度となり、製造販売や小売りのビジネスの比重が大きいほど売上は上がるものの、利益率は下がる傾向があることが確認できました。
  • このように見るとamazonは売上高の増加は著しく、2020年の売上高が38%増となっており巣ごもり需要の影響をうけビジネスが大きく拡大したことを明確に確認することもできました。しかし、利益から見ると、投資などの影響もあってか利益額でも利益率でもGAFAMの中では最も低いことが確認できました。

なお、使用データは以下の通りです。

感想など

以上、GAFAMについての「先の検討」と「後の検討」では指標を入れ替えるだけで、会社に対する印象が大きく変わることを示すことができたと思います。
言うまでもないと思いますが、企業分析を行う際にはいろいろな指標をグラフ上で入れ替えて検討することで新しい見方(発見)ができることを再確認できました。

また、バブルチャートを用いることで、企業の評価指標の動向が確認できることや、一工夫で多数企業の比較に利用したり、指標を加えることもできることが理解してもらえたのではないかと思います。
企業分析などされる際には活用頂ければと思います。

今回の記事は以上です。ここまで読んで頂きありがとうございました。

最後に定型の宣伝ですが、本件の深掘りやそれ以外での調査や特許分析などの案件についてのご依頼ベースでの相談がありましたら、私の特許事務所ホームページお問い合わせからお知らせいただければと思います。こちらもよろしくお願いします。